はじめに
またもやxxxpppです。
当記事は、BEATECH KSM Projectの企画のBEATECH ORIGINAL 5th -FestiNational- Advent Calendar 2020の16日目の記事になります。
今回の内容は、前回の記事で出した
"各難易度における許容配置"
"操作難易度の判断の仕方"
"リファレンスの読み方"
のうち、3つ目の"リファレンスの読み方"についてです。
前回の記事を読んでいなくても分かるように書きたいと思いますが、読んでおいてくれる方が文脈として入ってきやすいと思うので、まだ読んでなければ一読してくれると嬉しいです。
内容で分からない所とか「ここはこうじゃない?」とかツッコミとかがあれば、TwitterでもDiscord(K-Shoot MANIA JPサーバー)でも、直に私に聞きに来てください。
お断り
そういえば書き忘れてましたが、この一連の記事が想定しているのは、
比較的普通の音ゲー曲に、普通のCH譜面を付ける
場面です。
大ボス級曲の下位譜面だとか、逆にLv07以下のエントリープレイヤー向け譜面や、リズムが訳わからない曲とかソフラン曲とか、つまみ譜面やノーツ種や配置の偏った譜面など……。
要は、難易度が大多数から外れるものや、変わった曲や変わった譜面にする場合は対応範囲外です。
ああいうのは、適切な配慮を前提に実際に何がどのくらい難しいかを把握した上で、踏み込むべきところとそうでないところを逐一判断した上で構築するゲーム性です。
難易度の足し引きがある程度自在にできないうちに手を出すのはオススメしません。
この記事は、あくまで一般論から推測した内容を書いてるので、これを読んで自信満々にそういうのを作るのはやめておいたほうがいいです。
いやまぁ、この記事を自分から読みに来た人はそういう傲りがある人はいないでしょうから、まぁ大丈夫でしょう。
その手の曲を担当した場合、まぁみんな頭抱えますよね……。
準備
まずは準備として、リファレンスを引く前にやることがあります。
音をどこまで取るかを決めることです。
拾う音を決めたら、その通りに置けばいい訳ですが、その拾う音の選択基準として見てください。
いろいろな譜面見ていれば、だいたいどのくらい間引けばいいのかはわかってくるのですが、その見ることすらしない人が間々居るので、ものすごく大雑把な目安を書いておきます。
取った音の2~3倍の密度が、
(4譜面制を想定して)その曲の最上位譜面と同じくらい
が、だいたいの目安としてください。
ここでいう密度は、同時押し数とかよりかは、刻みの数を考えてくれるといいと思います。(8分だったら16分みたいな)
比較的ゆったりな曲風で難易度が低いならこれよりもう少し間引き、いかにも音ゲー曲で音数いっぱいな曲とかなら、密度を上げずに操作難易度をほんの気持ち上げたりします。
逆に2倍してキツすぎるようなら、その音を取るのは諦めたほうがいいです。
大人しくFXロングや斜線つまみなどを置いて、「操作はあるけど、トランジェントを拾ってはいない」タイプの配置にしておきましょう。
標語は「操作感は上げていいが、操作数は上げるな」です。
難易度を下げるために、フレーズの音を間引いたりしますが、このとき変な間引き方をしないように注意しましょう。
基本方針としては例えば8分に16分が混じるようなフレーズの場合は、16分部分を間引いて8分のみの一定のリズムにしたりします。
しかし、この間引かれる側の音が強く聞こえる音の場合は別で、そちらを優先的に残し、それが自然になるようにリズムを決めましょう。
また、2種類以上の音を同時に取ること、つまり混フレを置くことは稀です。
4つ打ちKickと長音とか、4つ打ちKickと裏打ちBassくらいはありますが、それ以上は基本無理と思ってください。
この目安からすぐ分かるように、16分が多い配置は基本的に黄色では出てきません。
8分間隔の2ノーツの間に1つノーツが足されただけのものが時偶入ったり、付点8分のリズム+裏(●○●●|○○●○|●●○○|●○●○)みたいな、16分が連続しないものは出てこないことはないですが、これでもLv11が出てくる下限で、曲中の基軸になるほど連発されるようなものではないです。
もちろん、つまみで音を拾う場合や片手操作の場合、白鍵と黄鍵が混ざる場合は、これより更に間引く必要があります。
ちなみに、なぜ「最上位譜面の半分の密度」と書かないかというと、最上位譜面を間引くだけで黄色難易度とした譜面にする輩がいるからです。
ナメてんのか、黄色譜面作るのやめろ。
取る音のリズムが決まったら、リファレンスを探す旅に出発です。
本題
リファレンスの探し方
では早速リファレンスを探していきましょう。
まずは、いま譜面を作ってる楽曲の、リファレンスを探したい箇所の特徴を掴みましょう。
(下記は一例です。)
・楽曲の雰囲気は?
(ゆったりしてる/ボーカルorインスト/楽曲のジャンル/ピロピロしてる等)
・BPMは?
(BPMの数字に対して±5%くらいの幅を許容)
・楽曲中の位置は?
(イントロ/序盤/中盤/終盤/ラスト等)
・楽曲中のどういうパートか?
(イントロ/バース/ブレイク/ドロップ/サビ/アウトロ等)
・楽曲の盛り上がるところか(難所か)?
・取る音は何の音か?
・取る音のリズムは?
大体この辺を掴めたら、某ルテの楽曲の中から、似た特徴を持つものを探してきます。
(こればっかりは1500曲超をある程度把握しておく必要があります。)
完全に一致はしなくても、ある程度近いものを選んできましょう。
(BPMに関してはかなり影響するので、優先度が高いです。)
前の記事にも書きましたが、リファレンスはADV譜面からにしておきましょう。
(CH譜面はクヲリティに差があり、既にバランスの崩れているものを選ぶ可能性があるため。)
リファレンスとして近いものが見つからない場合は、仕方ないので各操作難易度から難易度曲線が極端にならないように、自身の難易度感覚を頼りに作りましょう・・・・・・。
リファレンスにするものが見つかったら、リファレンスと自分の作っている譜面を比較しつつ、配置をします。
その際、以下の背景のようなものに注意してリファレンスを見るようにしましょう。
注意点(時代による変遷について)
要は難易度のインフレです。
某ルテには、時代が進むとともにインフレして、難易度に影響している項目がいくつかあります。
1つ目に、「楽曲の複雑化」です。
初期の頃には、比較的クラブミュージックに近いインストや、ボーカル楽曲としてリスニングとして親しみやすいテンポの楽曲が多かった印象でした。
しかし、同人音楽シーンの成熟(?)や、ゲーム全体と最上位難易度譜面のインフレとともに、「ゲームとして高難易度になる楽曲」が好まれて、主にFLOOR楽曲や描き下ろし曲を中心に、ハイテンポな楽曲や技巧的に音の詰め込まれた楽曲が目立つようになってきました。
これに伴って、同じくらいテンポで似たように聞こえる楽曲でも、譜面を付けるにあたって、より難しい譜面が付くことになったと私は思います。
これを逆手に取って、譜面を作ろうとしている楽曲の複雑度から逆算して、どの時代の楽曲を参考にするとよいかを判断する基準にもなると思います。
2つ目は、「取る音の深化」です。
これは、上の「楽曲の複雑化」にも関連することかもしれないですが、昔のADV譜面では、楽曲の土台やリフのリズムを鍵盤で拾うだけのような比較的シンプルな造りの譜面パートがよくあったように思います。
そこから時代が進むとともに、同じADV譜面でも徐々に取る音がメロディや一定でないリズムに移ってきたように感じています。
これを手助けに、作る譜面の取る音をどのくらい"奥"のものにするかという軸から、リファレンスを選ぶということも出来るでしょう。
3つ目は、「前提とする技術の増加」です。
このゲームでは、新ノーツや新配置がアップデートとともに増えてきました。
しかし「どう操作すれば取れるか」という技術認識が普遍化されるとともに、初登場時には難しい操作・配置とされていたものが、本質的な操作や認識と同等程度に近づいていきました。
それとともに、出現する最低Lvや「出来て当然」とされるLvが徐々に下がっていったように思います。
例を挙げると、曲線つまみや階段直角においては、ただの折返しや回しっぱなしで良いという操作のハックが認知されたため、初出当初はEXH譜面以上で時折見かける程度でしたが、現在では実際の操作難易度に認識の難しさを多少加味した程度の操作難易度として、ADV譜面でも比較的多く見かけるようになったと思います。
基本的には、その譜面を作っているその時の状況を前提に操作難易度を考えればいいと思います。ですが、リファレンス先ではその前提が違っているという場合もありますので、頭の片隅に置いておく必要があります。
譜面を作る際には、パートごとに違うリファレンス先を参照することがあると思います。
その場合、これらのインフレに伴う状況の変化がリファレンスによって異なっていることがあるかもしれませんので、1譜面にまとめるにあたって注意する必要があります。
注意点(楽曲の立ち位置について)
某ルテでは、楽曲の立ち位置を意識してその譜面の難しさが決められているような傾向があります。
一番わかりやすいのは、いわゆるボス曲と言われるものです。
これは、KACの最優秀/優秀楽曲などだけでなく、Remix元の楽曲の扱われ方だったり、上位譜面がメドレー解禁の後ろの方に配置されているなどがあります。
同じように、移植楽曲や多機種連動イベントで追加された楽曲、EX TRACKでの解禁を要する楽曲も難しい傾向があります。
特にΩなんたらやヘキサなんたらを介する楽曲群は、その譜面に挑戦し完走を勝ち取って解禁するというゲーム性上、独特なゲーム性を売りにしていたりや解禁システムを意識した譜面構成を、下位譜面のADV譜面であっても伴っていることが多いです。
(そうでないものもありますが、警戒するに越したことはないです。)
またアニソン原曲は、短い尺にゲーム性を圧縮したり、楽曲の構成が派手だったりするために少し忙しい譜面構成をしていたりするような気がします。
これは持論ですが、おうち某ルテに先行収録されている楽曲は「複数回挑むもの」としてチューニングされているように思えます。
そのため、リズム的には簡単でも、複合操作やつまみ、視覚的に難しいものが多いような気がします。
一見物量としては単純に見えても、実際の要求としては少し高いものが散見されるので、それを念頭に置くと良いかもしれません。
以上の楽曲においては、下位譜面であるADV譜面においても、歯ごたえのあるゲーム性を伴っていて、Lv表記含め、抜き出すパートが譜面内で難易度曲線のどのあたりにあるかを意識する必要があります。
逆に、FLOORを介していない東方アレンジや、EXIT TUNE楽曲として追加されたボカロ楽曲、ひなビタ/ここなつなどの版権系の楽曲の譜面は、その楽曲で呼び込む客層を意識してか、比較的易しく作られているため、安定性が高いです。
(そうでないものもあります。例えば、上位譜面に於いていわゆる”尖った譜面”を売りにしているものは、下位譜面でもその傾向があることがあります。)
これを意識しておけば、例えば他の同時期の楽曲と同じLv表記であっても、どこかに難しさが込められていて、 それを意識して探ることが出来ます。
注意点(ゲームメイクについて)
各楽曲では、その楽曲・譜面特有のゲームメイクが行われていることがあります。
まず1つとして挙げるとするならば、「譜面傾向」です。
一番わかりやすいところで言うと、つまみ譜面や鍵盤特化譜面があります。
その他にも、そこまで大きく振れている傾向でなくとも、「長音をロングで取ることを多用している」「シンプルなリズムながらも同時押しで難易度を確保している」「片手操作を特徴としている」など、その作風の前提条件があるからこそ、そのLvの範囲に収まっているということがよくあります。
その前提を踏まえずに、例えばその特化したゲーム性のために許されているものをいろいろなリファレンス先から集めてきて譜面を構成した場合、当然リファレンス群の難易度よりも高くなることが予想できるでしょう。
次に挙げるのは、「基本パターンとその発展」です。
想像しやすい例を挙げるならば、雪女[EXH]です。
何度も同じリズムや譜面パターンを繰り返しつつ、徐々にその複雑度を増していく構成をしている譜面はADVにもよくあります。
(特に直角系つまみ譜面などは顕著です。)
ここでも、この「徐々に複雑度を増していく」という工程をすっ飛ばして、いきなり発展型をリファレンスとしてすっぱ抜いてくるのは難易度からはみ出しがちになるので、気をつけねばなりません。
また、「難易度曲線が独特である」場合も注意が必要です。
時折、「イントロがやけに難しい」、「終盤を前に難所を終えて、ウイニングラン」のような構成の譜面があります。
こういうものを参考にする場合、単に楽曲の構成のみを気にするのではなく、1ゲーム中の難しさの配分具合から、難易度をどのくらい負担しているのかを加味した上でリファレンスを見る必要があります。
リファレンスとして参考にする際は、基本的にこれらの特徴を踏まえた上で、目指す難易度から大きく外れたり、構成する譜面同士の難易度のギャップを抑えるということに気を配る必要があります。
注意点(エフェクターについて)
某秋○○○ム氏と某co○○o@○○P氏については、(本人がわかってやってるのか、無自覚のままやっているのかは定かではないが)基礎的な配置ではなく踏み込んだ配置を採用しがちな傾向にあると感じます。
安定的であることを良しとするリファレンスとしては、彼らの手掛けた譜面を選ぶのは避けたほうがいいと思います。
(もちろんよく出来ていると思うものもありますが、割合的な問題です。)
変なことや難しいゲームメイクとして参考程度に見る程度には良いかもですが、比較対象にするには不安定という見解です。
注意点(その他)
なんか思いついたら書きます。
質問の紹介と回答
前記事での対談中に寄せられた質問に対しての回答をここに掲載しておきます。
質問①
K2
安定してる譜面の時期みたいなのはありますか?
また、インスタントに判断するときはやはり最新(ver付近) の某ルテ譜面を参照するのがよさそうでしょうか?
よく「II(の中期以降)の譜面はクヲリティが安定してきている」や「IVの譜面はちゃんと配慮が為された上で組まれている」と言われています。
確かにどちらも比較的安定している時期ではあると思います。
しかし、先に書いた「時代による変遷」の関係上、その譜面単体としては安定した作風であったとしても、譜面を作る現在の尺度から見ると少し古臭い手法であったり、当時には存在しなかった譜面パターンによる解決や、プレイヤーに期待する前提技術の増加などで、よりベターな選択肢が見つかる場合があります。
同様にその時点での新しいもののみをリファレンスにすることについては、最新の前提技術感覚を反映して作られているという意味では良いかもしれませんが、逆に新しいことに挑戦している最中であったり、たまたまその時期に尖った楽曲や譜面が集中していたりする場合があるので、その判断に自信がないうちはリファレンス範囲を広げるのが無難かと思います。
以上より、「この時代だけを参考にすれば大丈夫」というように特定の譜面群のみをリファレンスにするのはオススメしません。
質問②
K2
Lvだけをみると、NOV帯とADV帯、ADV帯とEXH帯には被りがありますが、ここまでLvではなく「黄色難易度」と難易度で区切っているのにはデザイン的な傾向の違いとかあったりするんでしょうか?
確かに、前者はLv07において、後者はLv12~Lv14において、2難易度の両方の譜面がある程度の数が存在する帯域があります。
しかしその被り部分において、どのような楽曲があるか、どのような配置で構成されているかを見ると、その2難易度の間にはかなりの隔たりがあることがわかります。
仮に同じLv07のNOVとADVの楽曲群を比較すると、明らかにNOVの楽曲はBPMが高かったり、いかにも高難易度というような楽曲・譜面が多く、逆にADVの楽曲は比較的ゆったりなテンポや間を大きく取った楽曲・譜面が多いことがわかります。
また、例えば同じ「8分縦連3連ショート」という配置だけを見ても、主にBPMの違いからNOVでは難しい要素として、ADVでは比較的普遍的なものとして使われているという差があります。
このことから同列に難易度の比較をすることは難しく、CHを作る上でNOVをリファレンスとして扱うことは避けたほうがいいと思います。
同様にLv12においてADVとEXHを比較すると、インフレ等の影響で楽曲の雰囲気や傾向まで近いものがあることにはあります。
しかし、その譜面が作られた「時代」を考えると、前提とするプレイヤーの技術や、難易度曲線のデザイン構築が異なっていることが多いです。
このため、CHを作る上でEXHから引き戻して考えるのは、上の例ほどではありませんがあまり推奨できません。
(パッケージの査定で、CH譜面の造りをしていないような譜面で難易度が逸脱しているものに対して、EXH帯の譜面からどの程度の難易度が許容されるかを判断し、そこからCH譜面のLvを査定するということはよくやりますが、最初からCH譜面の作り方を放棄して、難易度さえ当該部分に該当すればいいという作り方は止めてほしいです。)
以上の理由から、CHを製作する上でのリファレンスはADVから探すことをオススメします。
さいごに
だいたいこれが、いま現時点で私が思いつく"リファレンスの読み方"です。
というか、ほぼ注意点というか前提知識という感じで、"ハウツー"というよりかは"ハウノットツー"って感じですね……。
読み返すと、KSMのCH譜面の作り方についての記事のはずなのに、某ルテのことしかほぼ書いてないですね……。
明後日の3記事目の内容は、今回残しておいた"各難易度における許容配置"と"操作難易度の判断の仕方"について書く予定です。
ですが、1記事目に書いたように、全てを列挙していくのは不可能なので、頻出配置とその派生を紹介して、その派生が何故難しいか/易しいかを解説して、その理由を皆さんに推察してもらうことで難易度感覚を磨いてもらうという試みをしようと思います。
もちろん、私1人の知識では完全な記事になりえないと思うので、あえて叩き台として書き、そこに読者の皆様の意見を投げてもらうことでより練度の高い記事になるようにしたいと思っています。
少し状況が歪な記事になりそうですが、よろしくお願いします。
あと、またしても記事が間に合いませんでした。
本当に申し訳ありません。3記事目はちょっと面倒な記事なので、また遅れそう……。